稲井2022

高橋先生の思い出

稲井登志枝

高橋先生は私にとっては未知の世界への案内人・指導者でした。今の様に電子書籍やメールのやり取りが頻繁ではない20年前に、先生には手書きのお手紙で沢山の学びの機会を頂きました。
例えば、「稲井さん、文面を読む時は、原文をそのままに受けるのではなく、その文章の底にえがかれている著作の想いや流れを読むことがだいじですよ」とか、また真逆に、翻訳者による書物であれば「他人が訳した文面は、翻訳者の手垢がついているので、原文そのものを読まねば本当のことは伝わらないのですよ」等々、沢山の気付きを与えられました。スウェーデンボルグに関する質問には電話で長時間をかけて丁寧かつ迅速に教えられました。
ある日、『人間は死なない』という他人が書いたものの本の中に、高橋先生が書かれたスウェーデンボルグに関する文章がソックリそのまま引用されていたのを私が見つけてしまい、先生に伝えましたら、「確かにこれは、僕がPHPに出した文面ですが、普通は本の最後のページに参考文献として名前が印字されるのですがね」と言われましたが、それでその件は終わりました。
お優しく、先生のことは今も私の心に生きていて、判断に迷った時には(高橋先生ならばどの様になさるでしょう?)と判断基準を先生に置き換えています。