夏目漱石

夏目漱石とスウェーデンボルグ

 漱石は、英語の教師として熊本の第五高等学校在任中に、病気で筆が執れない正岡子規の依頼によって『ほとゝぎす』に「小説『エイルヰン』の批評」を寄稿した。(1899年8月発行のもの)
 この小説は、当時イギリスでベストセラーとなっていたもので、この中で漱石は、「エイルヰンの父に「シュエデンボルグ」宜しくと云ういう神秘学者がいる」と説明している。すなわち「この小説の主人公エイルヰンの父は、スウェーデンボルグのようだ」と言っているのである。
 スウェーデンボルグに関心を持っていたカーライルやエマソンを知っていた漱石が、スウエーデンボルグがどのような人物であったかを知っていた、というのは容易に想像できる。
 そして、この9年後、漱石は『三四郎』の腹案に「Swedenborg」の文字を残し、さらに大正3年に刊行された『心』には、主人公とKとの会話の中にスウェーデンボルグの名を登場させている。
 心霊現象や心霊学に関心を持っていたと言われる漱石は、スウェーデンボルグにも関心を持っていたのであろう。
………………………………………………………………………………………………………… 文責 山本康彦    

ヘレン・ケラー