フロストとリンカーン

フロストとリンカーンとスウェーデンボルグ

 アメリカ発行のスウェーデンボルグ派の機関誌『ザ・メッセンジャー』1999年11月号に「ロバート・フロストとエイブラハム・リンカーンがスウェーデンボージャンだったのか」という興味深い記事がありました。
  ロバート・フロスト(Robert Frost,1874~1963)は、広い読者層を持つアメリカの国民詩人です。彼はケネディ大統領の就任式で自作詩を朗読しました。彼の母はスウェーデンボージャンで、彼は子どもの頃、母からスウェーデンボルグの思想を教えられています。1923年、あるインタビューに応えてフロストは、「私の哲学ですか? なかなか言うのが難しいですね。私はスウェーデンボルグ主義者として育てられました。いまはスウェーデンボルグ主義者ではありません。でも私の中に残っているスウェーデンボルグ的なものはかなりありますね」と語っています。

 一方、エイブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln,1809~1865)が、20代終わりから30代にイリノイ州スプリングフィールドで法律事務所を開いていた頃、スウェーデンボルグ派の人びとと交流を持っていた事実は、私たちによく知られています。しかし一般のリンカーンの伝記は、これに気づかないか、あるいはこれを無視しています。
  以下に訳出した文章は、もともとはサンフランシスコ・スウェーデンボルグ教会のニューズレターに掲載されたものを『ザ・メッセンジャー』誌が再録したものです。
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フロストとリンカーンはスウェーデンボージャンか?
     ジェイムズ・ローレンス
 
 いいえ、実際にはそうではありません。しかし両者は[スウェーデンボルグと]強い結びつきを持っていましたし、しかも両者についての記事が最近、思いがけなく現れました。スウェーデンボージャンはいままでずっと、私たちの大統領[リンカーン]がまだ青年の頃、ある程度までスウェーデンボージャンたちと交流したことを知っています。しかし今やイリノイ州レーナ(Lerna)にある、「リンカーン丸木小屋国立遺跡(The Lincoln Cabin State Historic Site)」―この遺跡にはリンカーンの父や継母の最後に所有した農場や自宅が含まれています―で働くスタッフたちは、1840年代のエイブ(リンカーンの愛称)の宗教学習をいっそう完全に認めようとしています。リンカーンの隣人、スティーヴン・サージャントとナンシー・サージャント(Stephen and Nancy Sargent)の二人は、エイブの親友であり、彼らはその地域のスウェーデンボージャンの活動組織の中心メンバーでした。
 歴史に詳しいスタッフ、スーザン・ゴーディ(Susan Gordy)によりますと、その地域におけるリンカーン家の歴史を含む諸文書は、スウェーデンボルグの霊的著作へのエイブの―彼女の言葉を借りれば―「どん欲な avid」関心と、同様にまたサージャント家でのスウェーデンボルグ派の礼拝や討論会への定期的な出席を指摘しています。
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                         この記事は『JSA会報』7号に収録されたものです。

➡鈴木大拙